2025年5月29日
5月14日(水)、「大阪・関西万博」に行ってきた。
開催の必要性や膨張する費用、工事の遅れ、入場者数の水増し発表などマイナスの話題が開幕後も話題となっている今回の万博。特にお目当てはなかったが、メディアに関わっている以上、行かなければ何も言えない。国内で開催された国際博覧会にはすべて足を運んできたこともあり行くことにした。
今回は夫婦で。9時の開門に合わせて名古屋の自宅を出て15分前に東ゲートに着いたが、かなりの人出で心配になった。
4月末に行くことを決め、チケットはネットで購入したものの、「並ばない万博」のためのパビリオン事前予約枠が埋まっていて全く予約できなかったのだ。朝からこれではどこにも入れないのではないかと焦ったのだ。
2010年の「上海万博」に息子と二人で行ったときのゲート前の大行列を思い出したが、あの時のような喧騒はなく、やはり日本人は整然と騒ぐことなく列を作っていた。
飛行機に搭乗するときのような手荷物検査を経て入場してすぐ、「三菱未来館」に行った。55年前も20年前も「三菱未来館は当たり」という評判だったのでイチかバチかだと思って向かったが、10分ほどで入れて拍子抜けした。
この「三菱未来館」を皮切りに、主に海外パビリオンを中心に周ったが、映像を使ったアトラクションが多い。20年前の「愛・地球博」でもその印象を持ったが、更に増えていた。55年前の「大阪万博」で最初に入った「ニュージーランド館」も映像やパネル写真での展示だった。その国の自然や文化、産業を見せるには映像が一番だが、撮影や加工、映写の技術の発達が万博の展示に色濃く反映している。
その分、どこも似たり寄ったりの印象が強く、「あの国のパビリオンのアレ」というインパクトを感じなかった。
1970年の「大阪万博」は小学2年生だった。母親や祖父母と2度行ってアメリカ館の行列に並んで「月の石」を見た。コードレス電話の体験コーナーも行った。並ぶと1回通話ができた。「通話していいですよ」と会場でいきなり言われても当時は電話帳や電話番号簿をめくりながらかけていた時代。覚えている電話番号で体験しようとすると、多くの人が実家にかけることになる。従って、周囲から「もしもし、おばあちゃん?今、万博に来てるんよ。ほな、さいなら」という会話ばかりきこえてきた。
1975年の「沖縄海洋博」は中学1年生。クラスメートと二人で神戸港から船に乗って初めて沖縄に行った。売りは海に浮かんだ都市「アクアポリス」。神殿風の筏だった。実用化のニュースはとんと聞かない。大阪万博同様、沖縄海洋博にも「エキスポランド」という遊園地が作られたが、1983年に再訪したとき、潮風でさび付いたアトラクションが瓦礫にしか見えなかった。
1985年の「つくば科学博」は大学3年。祖父と行ったことだけが思い出。記憶が薄い。1990年の「大阪花博」はアナウンサーに転職した年に一人で行った。どこだったか忘れたが、あるパビリオンでクラウン(ピエロ)のショーをやっていた。終わった瞬間、関西のお客さんが口々に「しょうもない!」と身もふたもない感想を大声でぶつけていてその光景に笑ってしまった。「吉本新喜劇」を見慣れた人たちにはクラウンの無言の優しい笑いは物足りなかったのだ。
2005年の「愛・地球博」は開会前から仕事で何度も取材・中継で行き、家族でも行った。娘の学校の宿題のテーマに万博を選び二人で行ったが、私が場内で尿管結石の発作に襲われ動けなくなり、娘に付き添われ会場から救急車で搬送され入院したこともあった。
結石を排出してから仕切り直して娘と再訪。いくつかの海外パビリオンのスタッフにインタビューしてその国の特徴を聞くというのを手伝った。恐る恐る取材する娘に海外アテンダントの皆さんが丁寧に答えてくれたのを覚えている。
「カナダ館」のスタッフが「カナダは国土の中心部にカエデの木が多いから国旗の真ん中にカエデの葉が描かれているんだよ」と教えてくれた。そんなふれあいが万博の魅力の一つだろう。
今回、私は「セネガル館」で格闘技の写真が飾られているのを見て長身のスタッフに「これは何のスポーツ?」と聞いてみた。
「セネガルの相撲です。柔道に近いかな。サッカーの次に人気があります」。
短い会話で得られたこういう「へぇー」が思い出になる。
「韓国館」のスタッフは若い人が多く元気が良かった。迎え入れるときも見送るときも両手を振って大騒ぎなのだ。その唐突さに最初はキョトンとしている我々日本人の集団。ただ余りにテンションが高いので徐々に皆がハイタッチするようになる。無理やり感があるのだが、結局は彼らの勢いに乗せられる人が増え、笑顔でパビリオンを後にするのだ。これぞプライスレスで後味のよいおもてなしだった。
しかし、会場内で売っているものは総じて高い。名古屋駅のコンビニでそれを見越してあらかじめおにぎりを4個買っていって正解だった。「やたら高い」と悪評が立っていたから最初から会場内での食事は考えていなかったが、「ソフトクリーム900円」の表示に後ずさり。「ガリガリ君」みたいなアイスキャンディーが690円だったので他は推して知るべし。食堂があってものぞきもしなかった。
見応えがあったのは「大屋根リング」かな。木造でよくあんな壮大なモノができるものだと感心した。見上げてよし、歩いてよし、日よけとしてよし。
その大屋根リングの上から夕方の噴水ショーを見ようとしたときに、話題の「ユスリカ」の大群が!
平日チケット6000円。滞在12時間。「お勧めは?」と聞かれたら、全館制覇には程遠いが、「オーストラリア館」、「ブラジル館」、「日本館」、「韓国館」かな。
「どうだった?」と聞かれたら、今回の万博も「楽しかった」と答える。「なんだかんだと楽しいもの」という感想が55年前に刷り込まれていたのかもしれない。