2024年5月24日
5月19日から4日間、夫婦で山形を旅しました。行先は日本海側の秋田県と県境を接する米どころの庄内平野です。名古屋から東海道新幹線「のぞみ」、上越新幹線「とき」、羽越線「いなほ」と乗り継いで酒田まで5時間40分。車窓から見える新潟から山形の景色は田植えが終わり稲の成長を待つ水田が広がっていました。酒田に近づくと、雪を残した見事な鳥海山がその姿を水田に映していました。
我が家では20年来、酒田市の北にある遊佐町(ゆざまち)で穫れるお米を農家から直接購入して食べてきました。品種は「はえぬき」。粒がしっかりとしていて弾力があり冷めてもおいしい品種です。生産者は役人から農業に転身して、この地で40年お米を作り続ける土門秀樹さん。去年、「結婚した娘が食べたがっているので送ってほしい」と電話した際に「5月の庄内は鳥海山がきれいですよ」と教えられ、行くことにしたのです。
5月20日、宿泊先の「湯の台温泉 鳥海山荘」まで車で迎えに来てくれた土門さんの案内で遊佐の観光スポットを見に行きました。鳥海山からの湧水で透明度に優れた牛渡川。サケが遡上する小川には清流でしか見られない梅花藻が水中にそよいでいました。
「丸池様」と呼ばれる湧水のみで満たされたエメラルドグリーンの池はその神秘的な佇まいから近年パワースポットとして人気だそうです。
「胴腹滝」(どうはらたき)は二股に分かれた滝に見えますが、鳥海山の伏流水の水系が左右で違うそうで飲み比べると微妙に味が違っていました。
「十六羅漢岩」は江戸時代末期から明治にかけて、日本海で命を落とした漁師らの慰霊や海の安全を祈願して海岸沿いの岩礁に仏頭などが彫刻されており、夕暮れが美しいサンセットスポットとして人気の場所です。
そして、何といっても鳥海山です。初めて見ましたが雄大な眺望と、田植えが終わった季節に水田にその姿を水面に映した景色は素晴らしく、農道で何枚も写真に収めました。
今回、家族がずっと食べてきたお米が収穫される田んぼを見せてもらい、夜は江戸時代からの古い建物で登録有形文化財に指定されている土門さんのお宅で奥さんの心尽くしの庄内の郷土料理をいただきました。
生産者の方と語らいながら農家で食事を共にするという本当に楽しい時間でした。しかし、米価の下落が止まらず、炭水化物を避けるダイエットブームも影響し専業農家は貧しくなる一方だと土門さん。そんな実情も教えてもらいました。
田んぼの中をレンタカーで走っていると道路の脇に鉄製の陳列棚のようなものがたくさん設置されていました。私はてっきり収穫時に稲を一時的に置く場所だと思っていたら「地吹雪避け」だと知りました。土門さんには「棚とは珍発想」と笑われましたが、それほど私はこの地の人々の暮らしを何も知らなかったということです。これがあっても冬場の車の運転は地吹雪で視界が遮られ危険極まりないのだそうです。自然環境の厳しい土地で暮らし、米作りをしている農家の皆さんには敬意しかありません。
酒田は駅舎も新しく、駅前に立派な図書館ができていました。酒田生まれの日本を代表する写真家・土門拳を顕彰する「酒田市土門拳記念館」。見応えある写真の数々だけでなく建物も周囲の風景と調和していました。記念館のある飯森山公園は整備が行き届いており広くてとてもきれいです。
最上川も初めて見ました。高校野球の名門・酒田南高校も見つけました。
鶴岡の羽黒山にも行きました。平将門が建立したと伝えられる国宝の五重塔は修理中でした。足場で囲ってありましたが貴重な古い建築物を保存するための工事はさぞかし緊張する作業でしょう。9月には終わるそうです。
初めての庄内平野の旅でしたが食べ物が美味しく、道路は走りやすく、観光資源も多彩で満足しました。この地で収穫されたお米を食べ続け、いつか再訪したいと思います。